1994年夏。就職活動を終えた私は、友人とともに長野−岐阜県境にある乗鞍スカイラインをめざしていた。雑誌の特集か何かで
ここ乗鞍スカイラインが日本一高い所を走る道路と聞いて暇にまかせて国道20号をひたすら走りやってきたのだった。平湯温泉の
平湯の森というたくさん露天風呂がある温泉で一風呂浴びて出発である。まずはスカイライン入口の平湯峠を目指すわけだが、
すでにここから急坂、急カーブが続く。ブルーバード(当時)のエンジンも全開である。標高1600m程の平湯峠頂上からはいよいよ
乗鞍スカイラインである。道も心持ち広くなって走りやすいが相変わらず上りはきつい。当時のブルーバードにはかなり良いオイル
を入れていたこともあって2速〜3速の5000回転くらいまで(マニュアル車だった)を使って快調に上っていく。数少ない直線で
何台かの車をパスする。もう気分はのりのりである。そうこうするうちかなり眺めの良い場所に出た。車をとめて外に出る。
標高は2000メートルをとうに超え、すがすがしいというよりは高山独特の少し毒気のありそうな冷たい風が吹き抜けている。
いつしか樹林地帯を抜け、あたりは背の低い草と石ころだらけの荒涼とした風景になっていた。ふと耳を澄ますとどこからか
お湯の沸くような音がする。天然温泉?!なんと風流な??ドキドキしながら耳を澄ましながらあたりを探すがなかなか
見つからない。そのときふと、その音が意外と近くから聞こえてくることに気づいた。もしやと思い車のボンネットを開けると
・・・冷却水が沸騰しているではないか!!リザーバー(予備)タンクからはボコボコと大きな泡が盛んに上がっている。
慌ててエンジンをかけて暖房を全開にしてエンジンの熱を冷ますが冷却水はほとんどなくなってしまった。エンジンを酷使したあと
すぐエンジンを切ったため冷却ファンが止まり走行風もなくなったため、一気にオーバーヒート手前までいったらしい。
この日は観光客が多く畳平手前で一キロ程渋滞しておりその間も水温計は常にオーバーヒート寸前であった。
ひやひやしながら着いた畳平(標高2700m)でもまともな水はあるわけはなく友人の持っていた六甲のおいしい水を使わせてもらった。
しかしその程度の水では足りず、結局車の調子が落ち着いたのは麓のコンビニでホースを借りて大量に注水したあとのことであった。