1993年の夏、長〜い大学の夏休みを利用して、福島県南西部の桧枝岐村から新潟県に抜ける国道352号線を抜けてみようと
いうことになり、友人達と3人で車を走らせていた。自宅を出たのは夜の10時くらいであった。この日は関東に台風が接近して
おり、天気予報では明け方にかけて最接近する予報であった。このときはなぜか最短経路の塩原温泉経由ではなく鬼怒川温泉
経由のルートで行くことになっていた。日光の杉並木を抜けるころには暴風雨となっており、上からは杉の葉っぱや杉の枝が
ひっきりなしに振ってきて、たまにフロントガラスに杉の枝が大きな音を立てて当たったりして怖い思いをして走り抜けた。
そして鬼怒川温泉を抜け鬼怒川沿いの国道121号線の狭隘区間(当時の国道121号線は鬼怒川沿いは狭いところが多かった)
に入ったころだんだんと空が明るくなってくるとともに雨足も一段と強まってきた。何か不安な気持ちになり車のスピードを
上げる。いくつかのコーナーを曲がった時、路肩に赤いファミリアが止まっているのが見えた。こんな所で何してるんだろう?
などと思いながらもなおも前に進んだその時、車の下からゴロゴロ、バキバキという音がする。慌ててブレーキを踏む。
とりあえずライトをハイビームにしてみると、激しい雨の中で、何本かの倒れた杉の木と、泥の海と化した道路が見えた。
ドアを開けると泥(の水位?!)が車内に入りそうなところまできている。慌ててギアをRに入れる。深い泥の中であったが
何とか脱出に成功したのだった。この旅行の後でこんな話を聞いた。福島の裏磐梯で台風の夜に橋が流されてしまい、
橋が流されたと知らない車が何台も川に落ちたそうだ。その中の何台かは裏磐梯の湖まで流されたのか
最後まで車が上がらなかったという。崖崩れですら直前までわからないのだから、橋など落ちてもわからないのも
無理もない話である。